プロが見た「合気道 最強最弱」論 – 横浜・覇天会の“実戦”に答えはあるか?

「合気道? 優雅だけど、実戦じゃねぇ…」なんて、居酒屋談義で聞いたこと、ありませんか? 武道好きなら一度は耳にするこの手の話。合気道最強なのか、はたまた最弱なのか。まあ、白黒つけたがるのが人情ってもんですが、実際のところ、そんな単純な話じゃないのは、この道に詳しい人間なら百も承知のはず。

 

とはいえ、「合気道は試合せんから実戦は…」というイメージが根強いのも事実。でも、ちょっと待った。一口に合気道と言っても、いろんな味があるんですぜ。中には「キレイなだけじゃ物足りない、実際に使えるか試したい!」と、汗だくで組手やってる連中もいる。例えば、早くから競技形式を取り入れ、その可能性を切り拓いてきた富木(とみき)合気道の流れや、打撃(当身)との融合でリアルさを追求した合気道S.A.(エスエー)の試みなんかも、その代表格だろう。それぞれが、合気道という山への、異なる登り方を示してきた先達だ。

 

今回は、そんな「試したがる」合気道の中から、ここ港町・横浜で異彩を放つ**「合気道 覇天会(はてんかい)」に、プロの目線で切り込んでみようかと。彼らが追求する「実戦」合気道は、巷の「最強最弱」**論争に一石を投じるのか? それとも…。

 

 

創始者・藤崎天敬 – 「進撃の合気」は伊達じゃない

まずは、この個性派道場を率いる藤崎天敬(ふじさき てんけい)師範。福岡出身。合気道界では珍しい(?)180cm 92kgのガッシリ体躯は、覇天会の宗家 兼 筆頭師範 範士八段という肩書に、なるほどと思わせる迫力がある。武道・格闘技トータル18段ってんだから、その探求心たるや恐れ入る。空手の世界王者から「進撃の合気」なんて二つ名を頂戴してるあたり、タダ者じゃないオーラが漂う。

 

 

伊達や酔狂じゃない証拠に、彼が覇天会を興す前の話がある。その礎となったのは、打撃を取り入れた実戦的な合気道を追求し、一時代を築いた天才的合気道家の櫻井文夫先生創始の合気道S.A.での経験だ。そのS.A.が主催していた「実践リアル合気道選手権」という、他流派・他武道OKのガチンコトーナメントで、なんと優勝3回、準優勝1回、優秀賞1回。これはもう、言い訳無用の実績だ。どんな世界でも、結果を出す人間はリスペクトされる。口先だけじゃなく、実戦的な場で「使える」ことを示してきたわけだ。巷の「合気道は…」という声に対する、一つの静かな、しかし重いアンサーだろう。

 

 

上段右 藤崎師範  合気道選手権の様子 182センチ 108キロの相手に勝つ。 藤崎師範はその大型選手に相手に三戦三勝 藤崎師範が小さく見える体格差。

下段右 藤崎師範 極真空手坂本派無差別級日本チャンピオンと戦う。フルコン空手初挑戦。本戦引き分けも延長戦で判定にて惜敗。

 

 

覇天会の稽古 – 実戦を見据えたクラシックとジャズの融合?

じゃあ、その「使える」合気道はどうやって生まれるのか? 覇天会の稽古場を覗くと、面白い光景が見られる。「型稽古」で合気道の精緻な体の使い方(体捌き、姿勢!)を徹底的に体に叩き込む。これは基礎、まさにクラシック音楽の正確無比な技術習得だ。体の使い方、力の流し方、相手との呼吸…。地味かもしれないが、ここがなければ始まらない。

しかし、覇天会はそれだけじゃない。防具をしっかり着けて、突き・蹴り(顔面あり!)、投げ、関節、絞め、さらには顔面への手刀打ちまでOKという**「ユニファイド合気道ルール組手」**をバリバリやる。これはもう、フリージャズのセッションだ。基礎があるからこそ、相手の予測不能な攻撃(アドリブ)に対応し、合気道の技と打撃を融合させた自分の「答え」を瞬時に繰り出す。熱い! 実に熱い稽古だ。まさに、道場は実験室であり、ライブハウスでもある。

 

核心技術理念 – 「掌握の境地」(アブソリュートコントロール)

彼らが目指す**「掌握の境地」(アブソリュートコントロール)ってのは、単に相手をブッ倒すことじゃない。高度な合気道**技(立ち関節・崩し)、洗練された投げ、そして効果的な打撃を巧みに組み合わせ、相手を傷つけすぎずに状況を完全にコントロール下に置く。うーん、言葉にするのは簡単だが、実現するのは達人芸の域。力任せの制圧ではなく、相手を「掌握」する。まるで、腕利きの交渉人が、相手を尊重しつつも、見事に自分のペースに持ち込むような、そんな高度な技術体系を目指しているようだ。実戦的でありながら、どこか洗練された武の境地。荒ぶる力を、知性で御するような感じだろうか。

 

合気道 vs 他の格闘技:交流が示す有効性と客観的評価

「他の格闘技と比べてどうなのか?」覇天会は、技術の有効性を試合だけでなく、他武道との交流の中でも示そうとしています。

技術体系の独自性と統合: 打撃、投げ、関節技を流動的に連携させる覇天会の技術は、「捌く・崩す・打つ・投げる・極める」を統合的に運用します。特に、相手の攻撃を利用し、打撃から瞬時に関節技や投げに移行する展開は特徴的です。

 

じゃあ、相性は?: この「捌いて、崩して、打つ・投げる・極める」という流れは、打撃主体の相手に対しては、面白いようにハマる可能性がある。 相手の打ち終わりに合わせる、あるいは打ち込んできた力を利用して崩し、一気に関節へ…なんて展開は、まさに覇天会の得意とするところだろう。いわば、相手がパンチ(単音)で攻めてくるのに対し、こちらはカウンターの和音やアルペジオで応酬するようなものか。これは、実戦において大きなアドバンテージになり得る。

 

ただし、どんな達人も、どんな流派も万能じゃない。 例えば、柔道や柔術のように、寝技(グラウンド)での攻防に特化したスペシャリストに、土俵際ならぬ畳際でがっぷり四つに組まれ、そのまま寝技の深みに引きずり込まれたら…? これはまた、全く別のゲームだ。覇天会の主戦場が「立つか、倒すか、極めるか」というダイナミックな攻防にあるとすれば、寝技の世界は、まるで深海のような独自のルールと技術が存在する。スプリンターにマラソンを要求するようなもの、と言えばいいだろうか。その道の専門家には、専門家の強みがある。覇天会が最強だと声高に叫ばないのは、そうした武道の多様性への理解とリスペクトがあるからだろう。

 

この道場の面白いところは、内輪だけで「俺たちスゴイ」ってやってないこと。空手、スポチャン、中国武術…各界のトップランナーたちと普通に交流し、肌を合わせている。空手の世界王者・福山博貴選手や、日本一を4度経験した花車勇武選手、スポチャン世界王者、中国武術の達人…といった、そうそうたる顔ぶれだ。互いにリスペクトがあるからできることだし、常に学び続けようという姿勢の表れでもあるだろう。

 

総合格闘技 巌流島ファイターで中国武術 酔拳の達人今野先生と藤崎師範の組手。(散打)

 

特に興味深いのは、空手の花車選手が藤崎師範との稽古後、SNSで漏らした一言。「合気道の覇天会の藤崎先生は凄かったですよ!」 …これはリップサービスじゃない、本音だろう。畑違いのトップ選手にこう言わせるのだから、その技術には**「実戦」**での「本物」の何かがあるということだ。これこそ、客観的な評価の一つと言えるだろう。まるで、一流のミュージシャン同士がジャンルを超えてセッションし、「いやー、あの人のギター(技)はヤバいね!」と認め合うような、清々しい光景じゃないか。

 

メディア露出が多いのも特徴だ。テレビでタレントさんに護身術を指導したり、武道専門誌から週刊誌まで幅広く取り上げられたり。書籍やDVD『フルコンタクト合気道 覇天会 「合気道を使う!」』も出している。これは、彼らの技術が専門家以外にも分かりやすく、護身術としても応用可能であり、かつ、そのノウハウを広く伝えようという意志の表れだろう。

 

結論:「合気道 最強最弱」論争の“その先”へ

さて、結局、合気道最強なのか最弱なのか? …もういい加減、その物差しを捨ててみませんか? と、プロのライターとしては言いたい。武道はスペック競争じゃない。

覇天会が示しているのは、「合気道」という武道の持つポテンシャルを、「実戦で使えるか?」という問いに対して、真摯に、愚直に、そして熱く追求した一つの「形」だ。試合で試し、他流と交わり、打撃を取り入れ、独自の理論(掌握の境地!)まで構築する。彼らは自分たちの土俵、すなわち打撃と合気道技が交錯する立ち技主体の攻防においては、非常に有効な答えを持っている。 しかし、それが全ての局面で万能だと言っているわけではない。その潔さ、リアリティがまた、彼らの魅力でもある。

 

これは「俺たちが最強だ!」という宣言じゃない。「我々が信じる実戦的合気道はこれだ。興味があるなら、一緒に汗を流さないか?」という、ある種のオープンな招待状だろう。その熱量と探求心は、間違いなく本物だ。

横浜で、もしあなたが、

  • 「優雅なだけじゃない、もっとピリッとした合気道をやってみたい」
  • 「どうせやるなら、いざという時に使える技がいい」
  • 「打撃も投げも関節技も、全部ひっくるめて実戦的に強くなりたい」
  • 「横浜で、なんかこう、本気で打ち込める道場ないかな?」

…なんて思っているなら、一度、覇天会の門を叩いてみる価値は十分にある。見学や体験で、その「進撃」する合気のリアルな空気に触れてみてはどうだろう。

もしかしたら、「合気道 最強 最弱」なんて言葉が、いかにちっぽけな物差しだったか気づかされるかもしれない。そして、もっと奥深く、面白い武道の世界が待っているかもしれないぜ?

 

 

(まあ、見学に行くときは、事前に連絡するのを忘れずに。礼儀作法は、どんな武道でも基本中の基本だからね!公式サイトとかで確認してから行くのがスマートってもんだ。)